太陽から地球までの距離
地球が太陽の周りをまわるコース(軌道といいます)は楕円なので、地球の位置によって地球から太陽までの距離が若干異なります。平均では1億4700万kmです。この距離は新幹線の「ひかり」に乗って地球を出発してから太陽に到着するまでには100年近くかかってしまう距離です。
一方、世界で最も高い山はエベレストですが、その山の高さは8,848mです。10kmもないわけなので、山の頂上であっても麓であっても太陽からの距離は変わらないとみてよいのです。従って、太陽から届くエネルギーは山の頂上でも麓でも差はないのです。
そもそも温度の高さは何で決まるの?
温度というものは、物体の熱さ、冷たさの度合いを表す指標です。温度は絶対温度・摂氏・華氏・列氏・蘭氏などの種類があります。私たちが普段使用しているのは摂氏(せっし)で℃(どしー)という単位を使います。摂氏とは水の凝固点(ぎょうこてん:氷になる温度)が0度、沸点(ふってん:沸騰し始める温度)が100度となる温度の尺度です。
では、この温度の高さは何で決まるのかですが、結論からいうと、分子運動の大きさで決まります。
身の回りにある空気も水も物も、それをどんどん小さく細かくしていくと、最後にはものすごく小さなつぶになります。これを原子(げんし)といいます。この原子の種類は100種類くらいありますが、私たちの身の回りにあるすべてのものは、この原子の組み合わせでできています。
しかし、原子単体で存在することはとても不安定であるため、原子同士で相性の良いものが手を取り合って分子を作ります。水の分子は水素の原子2つと酸素の原子1つで組み合わされてできあがっています。
そして、その物体の原子や分子の運動が激しいと温度は高くなり、反対にゆっくり動いている場合は、その物体の温度は低くなります。
私たちは寒い時に手をこすり合わせたりしませんか?これは手をこすり合わせることで摩擦熱が生じます。摩擦熱というものは結局、摩擦によって分子運動を盛んにさせて、熱を作っているからなのです。
消えるマーカーなどが市販されていますが、ここで使用されているインクは50℃~60℃になると消える性質を持っています。そのため、背部についているゴムの部分でこすると、その摩擦熱で消すことができるのです。
では、山の上は分子運動が小さいの?
その通りです。山の上ほど分子運動が緩やかなんです。
この話をする前に、太陽から放射される熱が地球に伝わってきていると思いますか?
太陽の表面温度は約6000℃とされています。しかし、その熱は地球までの宇宙空間での長い距離と伝達する気体がない(真空)ために届かないのです。地球に届いているのは電磁波(でんじは)という光の一種で真空中で運ぶことができる電気的な波のようなものなのです。
この電磁波が地表を温めているから、そこからの熱が空気を温めているのです。
電子レンジはマイクロ波と呼ばれる電磁波を発生させて、食品を温めることができます。このマイクロ波は1秒間に約25億回も振動する波で食品中に含まれる水の分子に当たり、分子運動を盛んにすることで温めているのです。
これと同じように太陽からの電磁波が地表に激しく当たり、地表の分子運動を盛んにさせて地表に接している空気を温めるのです。
山の上で分子運動が緩やかなのは、実は気圧が関係しているのです。空気にも重さがあって、20℃の地表付近で1L(リットル)当たり約1.2gです。私たちの体にも常に空気の重さがかかっていますが、慣れているため感じないのです。
気圧は空気の重さだと考えればよいのです。だから、上空に行くほどその部分より上に乗っている空気の重さが小さくなるので、気圧が小さくなるのです。富士山頂では気圧は地表に比べて3分の2程度になります。
ポテトチップの菓子袋が山の上に行くと膨らんできます。これは周りの空気の圧力が小さくなることで、菓子袋の中の圧力が周りの空気の圧力より大きくなるからです。同じように、高い山に登ると気持ちが悪くなりやすいのは、高くなればなるほど気圧が低くなり、人間が取り込む酸素の量が減ってしまうからです。
満員電車に乗ると、隣の人とぶつかり合いやすくなりますが、空いている電車の中では隣の人とぶつかりあうことはほとんどありません。同様に、気圧が高いと分子と分子の間が狭く、はげしくぶつかりあいます。逆に高い山に登って、気圧が低くなると、分子運動が緩やかになり温度が下がるのです。一般的には標高が100m上がるにつれて気温が0.6℃下がる、と言われています。