私たちが幼いころ、ロケットに乗って宇宙へ行ってみたいとよく思ったものです。それから数十年たって、今や、有人での宇宙旅行が現実に行われるようになっています。
そんなことを想いながら、ロケットの原理や打ち上げについて考えてみました。

ロケットが飛ぶ原理

原理そのものは、野球の球場などで歓声と同時に飛ばされるジェット風船と同じなのです。
風船の中に入っている圧縮空気が、口を急に開くことによって飛び出します。その反動で風船は反対方向に飛び出します。しかし、進む方向を定める尾翼がないために、あちこちと飛び回るのです。

作用と反作用の法則

風船が反動で飛び出すといいましたが、力を加えれば、その力と全く同じ力が反対方向にかかるということです。これを作用反作用の法則と言います。

左の図ですが、砂袋を矢印の方向に投げると荷物台車に乗った人はA、Bどちらの方向に動くでしょうか?
もう、おわかりですね。砂袋で力を加えた方向と反対のBの方向に動きます。
ロケットの燃料噴射が砂袋です。そして荷物台車がロケットになるのです。

ロケットエンジンとジェットエンジン

ロケットが空高く飛ぶためには、ロケットを移動させるだけの大きなエネルギーが必要です。つまり、地面から飛び立つときはもちろん、空気のない宇宙空間でも飛び続けるためのエネルギーをロケット内部で作り続ける必要があります。

ジェットエンジン
ロケットエンジン

飛行機もロケットもガスを押し出して推進力を得ています。原理は変わりませんが、飛行機などに使われているジェットエンジンは外から空気(酸素)を取り込み、燃料ボックスに入っているジェット燃料を燃やすことによって得られる高温高圧なガスを押し出して飛行します。
しかし、ロケットは空気のない宇宙の中でも飛ばなくてはならないので、燃焼に必要な酸素を自前で用意する必要があります。だからロケットエンジンは固形燃料または液体燃料に酸化剤を使用して、空気のない空間でも燃料を燃焼させて推進力が得られるようにしています。

宇宙速度

宇宙速度って言葉、格好いいですね。「新世紀エヴァンゲリオン」のアニメの中に「第一宇宙速度を突破。現在、月軌道に移行しています。」という言葉があります。
この第一宇宙速度というのはいったい何なのでしょうか?

私たちがボールを投げるとき、力強く速く投げることで、より遠くにまっすぐに投げることができます。しかし、地球の重力でいつかは落ちてきます。
実はこの投げるボールの初速度が7.9km/秒以上で障害物や空気の抵抗もないものとすれば、少しずつ落ちてくるのですが、地球は丸いので落ちても地表からの高さを維持し続けることができます。だからボールは円軌道を描いて後頭部を直撃することになります。
この初速度を第一宇宙速度と言います。

だから、人口衛星は、速さが遅いと重力に引き寄せられて落下してしまうし、速すぎると重力圏を外れて円軌道を維持できなくなり、宇宙の彼方に飛んで行ってしまうことになります。この絶妙な速さを保つことで軌道に乗って飛び続けることができるのです。

でも、そうだとすると衛星はずっと燃料を燃やし続けてはならないのではないかと疑問が生じますよね。この理由は、宇宙空間では空気がなく、抵抗がないため、一旦動き始めると、慣性の法則でそのままの速さで動くことができるからエネルギーを使わなくて済むからです。しかし、何らかの微調整が必要な場合がありますので、それを地球上で常に監視し、軌道を外れるような場合は太陽光のエネルギーを使い、微調整を繰り返して、軌道から外れないようにしているのです。

第二宇宙速度
地球外探査機のように地球の周回軌道を振り切るためには、第一宇宙速度より更に大きな速度が必要になります。このようにその星の重力を振り切るために必要な速度を第二宇宙速度といいます。地球での第二宇宙速度は約11.2 km/s です。
この速度のことを別名で地球脱出速度とも呼ばれています。

人に話したくなる豆知識
人間がこの地球上で生きていられるのは、空気の分子運動が第二宇宙速度よりも小さいから、空気が宇宙空間へ飛び出さず、地球上に存在しているからだともいえるのです。

第三宇宙速度とは、約16.7 km/sで地球と太陽の重力を振り切るために必要な速度です。
第四宇宙速度とは、約300 km/sで銀河の重力を振り切るために必要な速度です。現時点で人類は第四宇宙速度以上の速度を出すことができていません。第五宇宙速度とは、1,000 km/s で銀河団の重力を振り切るために必要な速度です。
第六宇宙速度とは、約300,000 km/sで宇宙の重力を振り切るために必要な速度です。第六宇宙速度は速度の究極ともいえる光速ということになります。

ロケットの発射方向

ロケットが地球から脱出するためには、第一宇宙速度以上のスピードを出さなくてはなりません。このスピードを出すことは非常に大変なので、地球の自転の回転方向を利用します。
地球の自転方向は、北極側から見れば左回りです。言い換えれば西から東に向けて回転しています。だから、ロケットは東に向けて打ち上げれば、地球の自転速度を活用できて、効率よく第一宇宙速度に達成できやすくなります。
また、地球上の速度は、円周の長さが長い赤道に近いほど速く、北極や南極に近いほど遅くなっています。だから打ち上げ場所はできるだけ赤道に近い方が効率がよいのです。日本のロケット打ち上げ場所が種子島であることも、この理由の一つになっています。

種子島宇宙センター