Ⅲ 音と光について考えよう ー光の反射屈折ー
1 光の向き(偏光の話)
(1) 偏光板の働き
(2) 偏光板の利用
(3) 偏光板コップでたいけんしよう
(4) 偏光板カレイドスコープをつくろう
2 光の進み方(光の反射と屈折)
(1) コーナーキューブとブリリアントカット
(2) 全反射
(3) 見えたり、消えたりすると楽しいものを作ってみよう
(4) 光の反射と屈折を確かめよう
3 空の色、海の色(光の散乱)
(1) 光の波長と性質
(2) 空が青いわけ(散乱)・夕焼けが赤いわけ
4 光に関連する道具
(1) ピンホールカメラを作ろう・ レンズカメラを作ろう
(2) 光ファイバー、光が曲がる

「Ⅲ 音と光について考えよう」の4回目です。前回は光と色について学習し、分光器を自作していろいろな光を分解して観察しました。今回は光の性質、特に、偏光や屈折、散乱について学びました。偏光板を使った万華鏡やピンホールカメラを自作し、光の性質の不思議を探究しました。
1 光の向き(偏光の話)
光は「横波」です。例えば、太陽の光や白熱電球の光は、左右・上下・斜め、360℃すべての方向に振動方向をもつ光の波で構成されています。「偏光板」という特定の振動方向の波しか通さない性質をもった透明な板があります。この偏光板の働きを通して光の性質を学習しました。
(1) 偏光板の働き
ポリビニールアルコールというプラスチックのフィルムにヨウ素を吸着させて、一方向に引き延ばすとヨウ素の分子の方向が揃って、一定の振動方向の波だけを通す、偏光という現象を示すようになります。これを用いたものが偏光板です。


(2) 偏光板の利用
偏光はいろいろなところで利用されています。例えば、偏光サングラスをかけると反射光をカットし、水面の反射で見えなかった水中を泳ぐ魚の様子を見ることができたり、まぶしさを低減させてくれます。


また、液晶テレビなどのディスプレイやスマホの画面などにも使われていて、私たちの生活の中で重要な役割を担っています。

物体に力を加えると、その物体の内部に応力が生じます。左の図のように偏光板を使うと、応力の分布を虹色の干渉縞として目に見えるようにすることができます。この現象や方法を光弾性と呼び、プラスチックやガラスなど様々な物体に生じている応力の分布を確認し物体を壊さずに検査することができます。
(3) 偏光板コップで体験しよう
実際に偏光板を使って、いろいろな光(反射光)を観察してみました。紙コップの底を四角に切り抜き、偏光板を貼ります。紙コップを回しながら、机の上や、窓ガラスなど光っている場所を観察しました。


水槽の水面を偏光コップでのぞくと、水面の反射が消えて水の中がくっきりと見えます。


偏光板を2枚重ねたとき(電子黒板やスマホの画面を偏光板コップで見たとき)次の図のように、1枚目の偏光板(電子黒板やスマホの画面)で1つの振動方向だけになった光が、この偏光板と偏光方向が直交するように置かれたもう一枚の偏光板(偏光板コップ)によって通過できなくなり、真っ黒になります。


2つの偏光板コップを重ねて、一方のコップをくるくる回すと暗くなったり明るくなったりを繰り返します。
(4) 偏光板カレイドスコープを作ろう
セロハンテープやOPPテープは製造過程で一方向に力を加えて引き延ばしているので、分子の方向が揃って、弱い偏光性をもっています。


これらのテープは、幅方向と長手方向で光の屈折が異なり、複屈折という現象を起こします。
重ねて貼ったテープを偏光板を通してみると干渉模様が現れます。早速製作してみました。

プラスチック板にセロハンテープを重ねて貼り、偏光板コップで挟みます。くるくる偏光板コップを回すと次々に色が変わり、カレイドスコープ(万華鏡)のようでした。
2 光の進み方(光の反射と屈折)
光は跳ね返ったり(反射)、曲がったり(屈折)します。この反射と屈折について実験を交えて学習しました。
(1) コーナーキューブとブリリアントカット
今回の課題は「光が「すじ」になって見えるところを探してみよう」でした。「木々の間から差す光」「霧、雨の中を照らす車のヘッドライト」「薄明公選(天使のはしご)」「ほこりの充満した部屋に窓から差す光」「ミラーボール」など、たくさんの答えを出してくれました。


光がすじのように見えているのは、光が空気中のほこりや水の粒にあたって散乱されるためです。光は物体にあたる角度や、物体の表面の状態によって反射や屈折、散乱の状況が変わります。これを利用したものの一つが、コーナキューブと呼ばれるもので、直交する三枚の鏡に光をあてると、当てた方法に光が反射されて戻ってきます。

夜間、標識に車のライトが当たると明るく光って見えるのはコーナーキューブを利用しているからです。また、ダイヤモンドがとてもきれいに輝くのはブリリアントカットといい、特殊なカットを施すことによって入射した光を前面に反射させ、輝いて見せています。
コーナーキューブを組み立てて、レーザーポインターの光をあててみました。光は入射方向に戻ってきます。
(2) 全反射
光の反射と屈折について学習しましたが、入射角が大きくなると、入射した光をすべて反射する現象が起こりました。これを全反射といいます。例えば、光が空気中から水へ、またはその逆に水中から空気へ進行するとき、全反射を起こす角度があり、まるで鏡のように光は反射してしまい。中が見えなくなってしまいます。


これを利用すると、絵が見えたり、消えたり、魚が空を飛んでいるように見えたり、不思議なことが起こります。

火のついたろうそくの絵を描いてビニル袋に入れ、ビニル袋の上から火のついていないろうそくの絵を書き足して、水の中に入れると、不思議なことにろうそくの火が消えて見えます。同じように、絵を描いた紙をビニル袋に入れ、ビニル袋の外側に違う絵を描くと、水中と空気中で絵が変わります。全反射によって袋の中の絵が見えなくなります。

屈折を使っても面白い現象が見られました。割り箸を水中にいれると、折れ曲がって見えます。コップの底に絵を描いて、水を入れていきます。斜めから見ると、見えなかった絵が水位が上がると見えてくるようになります。

(4) 光の反射と屈折を確かめよう
レーザーポインターの光を使うと、光の進路を観察することができます。水槽に角度を変えてレーザーポインターの光をあてると反射や屈折の様子がよく分かりました。
3 空の色、海の色(光の散乱)
空が青く見えたり、夕焼けで赤く染まったりするのは、ここまで学習した光の反射、散乱が大きくかかわっています。散乱現象を実験で確かめました。
(1) 光の波長と性質
空気中には、水滴やほこりなど様々な粒子が浮遊しています。光はこの浮遊している粒にあたると、いろいろな方向に反射します。これを散乱といいます。散乱の程度は、光の波長によって変わります。波長の短い光ほど散乱されやすいという性質があります。


(2) 空が青いわけ(散乱)・夕焼けが赤いわけ
波長によって散乱の程度が異なることが、空が青く見えたり、夕焼けが赤く見える理由です。日中は太陽の光はいろいろな方向に散乱していますが、波長の短い、青や紫がより散乱されるため、空全体が青く見えます。夕方になると陽が傾き、長い経路を通って光が届きます。青色が散乱され、私たちのところには赤・オレンジ色の光が届くため夕焼け色に染まります。


実験で夕焼けを作ってみました。ペットボトルに少量のワックスを懸濁させた水を入れ一列に並べます。端から白色光をあてると、青色が散乱され、ペットボトルを通過するたびに赤みがかり、最後夕焼けが再現されました。

4 光に関連する道具
(1) ピンホールカメラを作ろう
私たちの周りには光の性質を利用した道具がたくさんあります。例えば、光の屈折を利用すると簡単なカメラができます。レンズの替わりに小さな穴を開けただけのカメラは、ピンホールカメラと呼ばれ、現代のカメラ技術の出発点とされています。15世紀のヨーロッパで写生を補助する道具として広く使われるようになりました。ピンホールカメラを早速、自作してみました


光は直進する性質があるので、小さな穴を開けるとこの穴を通った光だけが通過し、反対側のスクリーンに逆さまの像を結びます。このため、映し出される像は上下が逆転します。できるだけ光の反射を抑え、像が見やすくなるように黒い画用紙で製作しました。


(2) レンズカメラをつくろう
ピンホールカメラはピントもあってよく見えますが、ピンホールを通過する光の量が少ないので、見える像が暗いのが欠点です。そこで、もっと光を集められるように凸レンズを使ったレンズカメラを作成しました。


今度はピントを合わせるのが大変でしたが、光をたくさん集められるので、映る像は明るくなりました。
(2) 光ファイバー、光を曲げる
光の性質を利用した道具は、カメラだけでなく私たちの身の回りにたくさんあります。例えば、光ファイバー。光ファイバー通信網は、ICT社会にはなくてはならないインフラですね。これはガラスの中を光が全反射しながら進むことで、少ない損失で、遠くまで届くことを利用しています。


光の性質に関わる現象として、逃げ水や蜃気楼などがあります。夏の暑い日、アスファルト舗装の道路などは、熱くなり空気も温められて、その上の層の空気とは温度差が出ます。密度の低い空気の層と密度の高い空気の層ができて、その界面で光は曲がります。
そのため、本当はもっと遠くにあるものの像が、近くにあるかのように見えたりします。この現象を実験で再現してみました。濃い食塩水に食紅で色をつけ、その上に混ざらないように水を入れます。密度の高いピンク色の食塩水の層と密度の低い水の層の2層の境界で光は進行方向が曲がります。
今回は、光の性質についていくつもの観察や実験、製作をとおして学習を進めました。点のような穴を開けただけの箱がカメラになりました。光ファイバーなど光の性質が応用されている道具は、生活のなかでなくてはならないものになっています。重要な光の一端に触れることができました。次回は電気について学習していきます。
